100球打つなら「30球」で十分!!

上達を阻む「運動」という名の練習


仕事帰りの練習場。
ストレス発散とばかりに、ドライバーを振り回し、気づけばカゴは空っぽ。
汗をかいて「あー、いい練習をした」と満足して帰宅する。

正直に申し上げます。それは練習ではなく、ただの「運動」なのです。

元ツアープロの視点から言わせていただくと、多くのアマチュアゴルファーは「練習のやりすぎ」でゴルフを下手にしてしまっています。ここで言う「やりすぎ」とは、思考停止状態で球数を打つことです。

何の目的もなく打つ100球より、1球1球プレッシャーをかけて打つ30球の方が、ゴルフの寿命を縮めずに上達できます。
今日のPGAエッセンスは、あなたの練習時間を半分にし、上達スピードを倍にする「PGA式・高密度練習ドリル」をご紹介します。


なぜ、練習場で「ナイスショット」を連発してはいけないのか?

まず、残酷な事実をお伝えしなければなりません。
練習場で「気持ちよく打てている時」ほど、コースでのスコアは崩れやすいというパラドックス(逆説)です。

「マシンガン打ち」が埋め込む悪い癖

あなたは練習場で、同じクラブを持ち、同じマットの上から、同じ目標に向かって何球も続けて打っていませんか?
1球目がミスしても、2球目、3球目と修正し、4球目でナイスショットが出る。そして「よし、掴んだ!」と満足する。

これは、ゴルフの上達において最も危険な罠です。

コース上に「2球目」はありません。
何球も打ってアジャストする能力は、コースでは何の役にも立たないのです。それどころか、リズムよくポンポンと打つ「マシンガン打ち」は、スイングの修正能力ではなく、単なる「反射神経」を使っているだけに過ぎません。

何も考えずに身体が温まった状態で打つナイスショットは、脳を使わずに出た「まぐれ」に近いものです。これを実力と勘違いしてコースに出ると、「あれ?おかしいな」という泥沼にハマることになります。

プロは「不快な練習」を好む

私たちプロゴルファーが練習場で行うことは、皆さんが想像するような華麗なショットの連発ではありません。
むしろ、端から見れば地味で、時にはミスショットを意図的に出すような練習さえ行います。

  • 極端につま先下がりの状況を想定して打つ
  • わざとスライス回転をかけて打つ
  • あえて芯を外して打つ

これらは、脳に「不快感」や「違和感」を与える作業です。
人間は、快適な環境(平らなマット、一定のリズム)にいると、脳がサボり始めます。脳がサボると、スイングの細かいズレに気づけなくなります。
上達とは、脳に汗をかかせることです。気持ちよく打って汗をかくのは身体だけ。本当に必要なのは、脳をフル回転させる「質の高い練習」なのです。


「30球」で完結する高密度練習法

では、具体的にどうすればいいのでしょうか。
私が提案するのは、練習の球数を大幅に減らし、その分1球にかける「密度」を高めることです。
もしあなたが普段100球打っているなら、まずは30球に制限してください。その代わり、以下のルールを徹底します。

ルール1:1球ごとにクラブを替える

実際のラウンドで、同じクラブを2回連続で使うことは稀です(OBの打ち直しや、パターを除けば)。
練習場でもこれを再現します。

  1. ドライバーを打つ
  2. 次は7番アイアン
  3. 次はウェッジ
  4. またドライバーに戻る

このように、1球ごとにクラブを持ち替えてください。
クラブが変われば、長さも重さも、ボールとの距離も変わります。その都度、セットアップ(構え)を作り直す必要があります。
この**「セットアップを毎回リセットする」**という行為こそが、コースでの対応力を養う最大のトレーニングになります。

ルール2:プレショット・ルーティンを完全再現する

練習場で見かける最大の間違いは、マットの上にボールを置き、すぐに打ち始めることです。
コースでそんな打ち方をしますか? しないはずです。

  1. ボールの後方に立つ
  2. 目標を確認し、弾道をイメージする(ビジュアライゼーション)
  3. 素振りをしてスイングのイメージを作る
  4. ボールに歩み寄り、アドレスに入る
  5. ワッグルをして始動する

この一連の流れ(プレショット・ルーティン)を、練習場の1球1球すべてで行ってください。
これを忠実に行うと、1球打つのに1分〜1分半はかかります。つまり、30球打つだけで45分程度の時間がかかる計算になります。
これなら、球数が少なくても十分に濃密な練習時間となります。

ルール3:打った直後に「解説」を入れる

打った後、すぐに次のボールをセットしてはいけません。
今のショットがどうだったのか、自分自身で解説(フィードバック)を行います。

  • 「今のはフェースが開いて入ったから右に出た」
  • 「リズムが早くなってトップした」
  • 「狙い通りに打てたが、少し風に流されたイメージ」

心の中で呟くか、あるいは練習ノートにメモを取るのがベストです。
「なぜミスをしたのか」「なぜ上手くいったのか」を言語化する能力。これこそが、プロとアマチュアを分ける「ゴルフIQ」の差です。言語化できないショットは、再現性がありません。


実践ドリル:仮想ラウンド(シミュレーション練習)

ここからは、私が現役時代に行っていた具体的なドリルを紹介します。
30球の中で、ぜひ取り入れていただきたいのが「仮想ラウンド」です。

ドリルの手順

あなたのホームコース、あるいはよく行くゴルフ場の特定のホールを頭の中で完全にイメージします。スコアカードが手元にあれば、それを見ながらでも構いません。

【例:ホームコース 1番ホール Par4 350ヤード】

  1. 第1打(ティーショット):
    ドライバーを持ちます。練習場の特定のネットや支柱を「フェアウェイの真ん中」と見立てます。
    • 結果: 少し右に出て、練習場の右のネット付近に着弾。
    • 脳内変換: 「あ、これはコースだと右のラフだな。残り150ヤードくらいか。ライは少し沈んでいるかもしれない」
  2. 第2打(セカンドショット):
    ラフからの150ヤードを想定します。ライが悪いので、大きめの番手(例えば6番アイアン)を短く持ちます。
    • 結果: ハーフショット気味に打って、低い球で真っ直ぐ飛んだ。
    • 脳内変換: 「よし、グリーン手前の花道まで運べた。残りは20ヤードのアプローチだ」
  3. 第3打(アプローチ):
    52度または58度のウェッジを持ちます。20ヤード先のカゴや看板をピンに見立てて打ちます。
    • 結果: 狙い通り、半径1メートル以内に落ちた。
    • 脳内変換: 「OKパー、もしくは1パットでパーだ」

このように、1球の結果に応じて次の状況を設定し、18ホール(またはハーフ9ホール)を回りきります。
これを行うと、練習場の景色が消え、脳内は完全にコースモードになります。

このドリルのメリット

  • 「流れ」を作れる: 良いショットの後に気が緩んでミスをする、悪いショットの後に無理をして傷を広げる、といったメンタルの動きを擬似体験できます。
  • リカバリー力がつく: 「ミスしたから次はどうするか」という思考が自然と身につきます。
  • 飽きない: 単純作業ではなくゲーム性があるため、集中力が途切れません。

技術を磨くなら「ビジネスゾーン」だけをやれ

シミュレーション練習だけでなく、純粋にスイング技術を向上させたい日もあるでしょう。
その場合でも、フルショットの練習は不要です。
PGAプロが最も大切にし、最も時間を割く練習。それは**「ビジネスゾーン」**の反復です。

ビジネスゾーンとは?

時計の針で言うところの、9時(腰の高さ)から3時(腰の高さ)までのインパクトエリアのことです。
このゾーンの動きさえ正しければ、ゴルフは成立します。逆に言えば、ここが間違っていれば、いくらトップを高く上げても、フィニッシュをかっこよく決めても、ボールは曲がります。

具体的な練習方法

  1. ショートアイアン(9番やPW)を持つ。
  2. 足を肩幅より狭くして立つ。
  3. 腰から腰までの振り幅だけでボールを打つ。
  4. この時、**「インパクトの音」「ボールの高さ」**が常に一定になるように集中する。

地味です。非常につまらない練習です。
しかし、タイガー・ウッズをはじめ、世界の一流プロたちが練習の最初に必ず行うのが、この小さなスイングの確認です。

フルショットをしてバランスを崩すくらいなら、このビジネスゾーンの練習を30球やった方が、はるかにスイングの芯が作られます。
「小さな動きでボールをコントロールできない人が、大きな動きでコントロールできるはずがない」
この言葉を、肝に銘じてください。


練習の質を高めるための「ツール」と「環境」

最後に、効率的な練習をサポートするための環境作りについて触れておきます。
プロは感覚だけに頼らず、客観的なデータを重視します。

アライメントスティック(またはクラブ)を使う

練習場でマットの向き通りに立っているつもりでも、実はズレていることが多々あります。
足元にアライメントスティック(なければクラブ)を置き、常に「正しい向き」に立てているかを確認してください。
プロの練習風景を見てください。ほぼ全員が足元に棒を置いています。彼らは自分の感覚を信用していません。基準となるガイドラインがあって初めて、正しい練習ができることを知っているからです。

スマートフォンで撮影する

今は誰もが持っているスマートフォン。これで自分のスイングを撮影してください。
見るべきポイントは「かっこよさ」ではありません。

  • アドレスの前傾角度が崩れていないか
  • テークバックで手だけで上げていないか
  • リズムが一定か

自分の主観(つもり)と、客観(動画)のズレを埋める作業。これこそが練習です。


まとめ:練習は「本番の予行演習」であれ

ゴルフにおいて、練習場は「上手くなる場所」ではありません。
練習場は**「自分の状態を確認し、コースで戦う準備をする場所」**です。

100球をなんとなく打って「今日は調子が良かった」と満足して帰るのか。
30球を脳に汗をかきながら打ち、「今日はラフからの対応が悪かったから、次はそこを重点的にやろう」と課題を持って帰るのか。

半年後、両者の間には埋められないほどの実力差がついています。

今日から、練習の目的を変えてください。
「運動」ではなく「練習」を。
「量」ではなく「質」を。
そして、「ナイスショット」ではなく「対応力」を求めてください。

それが、PGAのエッセンスを取り入れ、スコアの壁を突破する最短のルートです。
次回の記事をお楽しみに!


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